多様体と幾何学

松本『多様体の基礎』から始めて、松島『多様体入門』、志賀『多様体論』まで、制覇します。

解析入門Ⅰ(その13)

 現在2023年5月7日9時35分である。(この投稿は、ほぼ3652文字)

麻友「こちらの本は、使わないの?」

私「もう少しで使う。まず、昨日のスキャン原稿で、

の、最後のところを、見て欲しい」

若菜「


‘逆元の逆元は、もとの元’は、

 定理1.1

 {a} を、{G} の任意の元とするとき、

 {G} の任意の元 {a} に対して、{(a^{-1})^{-1}} が、成立する。


ですね。あれっ?」

結弦「これ、定理になってない。なんか、足りないよ」

私「そう。{(a^{-1})^{-1}} でなくて、{(a^{-1})^{-1}=a} なんだ」

若菜「あー、なるほど」

麻友「それで、逆元って、何なの?」

私「結弦が、以前良いこと言った。実数の掛け算では、逆元は、逆数のことだ」

結弦「つまり、

{\displaystyle 8^{-1}=\frac{1}{8}}

という、当たり前のこと?」

私「そうなんだ。ただ、この場合、左辺は、{8^{-1}} (はちインバース)、右辺は、{\displaystyle \frac{1}{8}} (はちぶんのいち)と、読む」

若菜「そうすると、定理1.1は、逆数の逆数は、元の数。つまり、

{(8^{-1})^{-1}=\frac{\displaystyle 1}{\displaystyle \frac{1}{8}}=8}

だと言ってるのね」

私「普通、群論の教科書では、このくらいのことは、あっという間に、通り過ぎる。でも、これの証明を、読んでいると、不思議な気分になる。次のスキャン原稿」

私「

*******************************

 証明

※ {(a^{-1})^{-1}=e \circ (a^{-1})^{-1} =(a \circ a^{-1}) \circ (a^{-1})^{-1}\\
=a \circ (a^{-1} \circ (a^{-1})^{-1})=a \circ e =a}

が成立する。したがって {(a^{-1})^{-1}=a} が成立する。{\blacksquare}

*******************************
                    (古い数学基礎概説のノート p.6 より)

は、どうだ?」

若菜「公理の式、{e \circ a =a} だけでなく、{(a^{-1})^{-1}=e \circ (a^{-1})^{-1}} も、使うんですね」

私「その点が、重要だ。さらに、次のスキャン原稿

左ページの下


?ここまでくると、‘同一’ということの意味が分からなくなるが…
 ただ = で結べるかどうかということになってしまう。


と、1993年の私が、疑問を呈している」

麻友「あっ、太郎さんも、同じ疑問を、持ったんだ。2つのものが、一方を、イコールなままで、変形していって、もう一方に、イコールで結べたら、同一のものだと、証明したことになるの?」

私「ならない」

若菜「ならないんですか?」

私「『超実数そして実数』で、まだフィルターを、作れてないけど、真理のカメさんが、

{(3,3,3,3,\cdots)} と、{(3,4,3,3,\cdots)} で、

数字が同じところが、{\{0,2,3,4,5,\cdots\}} と、無限個あって、補集合が、{\{1\}} と、有限集合だから、

その同じところの集合を、カメさんが、『持ってるよ』というのだった。そして、この場合、真理のカメさんの見方で、等しいということになる。こういうのを、数学では、『同値類で割る』と、言うのだが、本当に同一のものでなくとも、等号で結ばれる。もう、『両辺が絵として等しい』も使えない」

麻友「ああ、『絵として等しい』だったわね。最初は」

私「1階の理論で、集合論を展開する場合、{A=B} は、{\forall x (x \in A \Longleftrightarrow x \in B)} によって定義される。ここまでしか、私は知らない。2階算術も、知りたいが、他にも知りたいことが、沢山有る」

結弦「結局、その場その場で、= の意味を、定義して使うんだね」

私「まったくもって、その通りだ。優秀!」


麻友「太郎さんが、わざわざ、群論に、『数学基礎概説』を、持ち出したのは、そのためだったの?」

私「そう。証明して行くとき、等号で、結んでいくけど、本当に、等しいのか、疑問に思う。『数学基礎概説』には、等号をどう使うか、書いてあるので、引用した」

結弦「結局、どうまとめられたの?」

私「『ただし、等式は=の左辺および右辺の式の表す {G} の元が同一であることを意味する』という(その8)のときの群の定義での決まりが守られるように、

 公理 {\mathrm{G4}}

 {G} の任意の元 {a} に対し、{a=a}


 推論 {\mathrm{GE1}}

 {G} の任意の2元 {a,b} について、すでに得られているかまたは仮定されている {a=b} から {b=a} を導く。
 この推論形式を、

{
~~~a=b\\
~~\rule{1.5cm}{0.3mm}\\
~~~b=a
}

と書く。


 推論 {\mathrm{GE2}}

 {G} の任意の3元 {a,b,c} に対し、

{
~~~a=b~~~~~~b=c\\
~~\rule{4cm}{0.3mm}\\
~~~~~~~a=c
}


 推論 {\mathrm{GE3}}

 {G} の任意の4元 {a,b,c,d} に対し、

{
~~~a=b~~~~~~c=d\\
~~\rule{4cm}{0.3mm}\\
~~~~~a \circ c=b \circ d
}


 推論 {\mathrm{GE4}}

 {G} の任意の2元 {a,b} に対し、

{
~~~~~~a=b\\
~~\rule{3cm}{0.3mm}\\
~~~a^{-1}=b^{-1}
}


この1つの公理と4つの推論規則を加えれば、一応証明が、行える。古いノート9ページの演繹を、見てくれ」


若菜「うーん。お父さん、公理 {\mathrm{G2.1}} と、公理 {\mathrm{G2.2}} の順番入れ換えた? それから、公理 {\mathrm{G3.1}} と、公理 {\mathrm{G3.2}} も」

私「良く気付いたな。単位元と逆元の説明するとき、右単位元と右逆元の存在だけ仮定すれば、群論は、築けるんだ。左に揃えても良いけど、私は、右利きだ。それで、{\mathrm{G2.2}} と、{\mathrm{G3.2}} を、削るよ。と、言う方が簡単なので、順番を入れ換えたんだ」

若菜「油断も隙もない」

麻友「教科書を書き換えてくるとはね」

若菜「もう一度、全文写しした本文を、ここまで見せて下さい。チェックしたいです」

私「今日は、朝9時からやってる。疲れたから、ここまでとする。解散」

 現在2023年5月7日17時52分である。おしまい。