多様体と幾何学

松本『多様体の基礎』から始めて、松島『多様体入門』、志賀『多様体論』まで、制覇します。

解析入門Ⅰ(その12)

 現在2023年5月6日15時09分である。(この投稿は、ほぼ5172文字)

麻友「私が、大学で、数学を勉強していることに、なっちゃったのね」

私「主に、お芝居とミュージカルを、勉強しているけど、数学や物理学も、勉強していることにした」

若菜「お父さん。思い込みが、激しいから」

結弦「でも、今まで8年間、お母さんが、数学の力を身に付けられたのは、お父さんのブログを、説明してもらえる当てがあったからだと思うな」

若菜「誰?」

結弦「スタッフの誰か、数学に詳しい人」

若菜「でも、引退して、その人を利用できなくなった。それで、大学へ行っただろうと」

結弦「有り得ないことではない」


麻友「何だかんだ言って、私が、もの凄く、数学に強いように思っているけど、太郎さんの様に、数学を楽しんでいる、なんてことは、到底私には出来ませんからね」

私「大学で、3年半、勉強した後、高校1年生まで、リセットされて、それでも、働かない頭と、震える手で、数学を築き直すなんて、普通の人、もう嫌になるよな」


若菜「お父さんは、本当は、大学時代に、自分の数学の基礎が、危なっかしいことに、気付き、『数学基礎概説』を、ノート取りながら、読んでるという」

結弦「そのときは、全文写しは、してなかったのでしょう。つまり、本文を、まとめていた。そのノートを、見たいなあ」

麻友「まさか、捨てちゃったとか?」

私「京都では、『解析入門Ⅰ』を、ルーズリーフにまとめたものも、あった。だが、これは、いらないので、捨ててしまった。母が、『数学のノートなんでしょう?』と、言ったが、あの程度のノートは、いつでも書ける。『解析入門Ⅰ』のテキストが、あるから。でも、『数学基礎概説』の古い方のノートは、捨てなかった。いつでも、見返せる必要が、あったから」

結弦「そっちの方が、いいなあ」

私「見たいか。ちょっと待ってろ」

結弦「えっ?」


結弦「今日、新聞届ける日だよな。お金持ってる。スキャンしに行ったのかな?」

若菜「もう、結弦が、焚きつけるから」


私「おお、『数学基礎概説』が、綴じられてたのが、バラバラになる前の写真もあったぞ。スキャンも8ページしてきた」

若菜「つまり、240円」


麻友「私と結婚したいなら、それくらいの投資は、惜しむべきでは、ないわね」

私「以前の、『数学基礎概説』


 ノートの表紙


 ノートの扉


 まえがきは、写さず、凡例の要点を、まとめ、


 早速、本文。ブログの群論の公理の話は、ここから持って来ている。


 証明とは、何ぞや? という問いかけ。


 推論を、推論規則にまとめる。初めての演繹図。


 カッコの付け過ぎを、自戒。ヒルベルトの公理主義的立場


 推論として modus ponens (3段論法)を用いる演繹


今日は、これくらい」


若菜「ノートのこの表紙、

1993年12月2日~1994年1月14日。本当に、3回生のお誕生日に、始めたんだ。気違いになる前だから、字も整ってる」

結弦「12ページの演繹を始める前に、1993.12.7 と、日付がある。5日で、ここまで進んだんだ」

私「上野さんのゼミ、辞めて、他にやらなければならないこと、なかったんだ」

麻友「やらなければならないことが、1つもなくなると、人って、建設的なことを、始めるのね」


私「さて、諸君。懐古趣味に浸っていては、いけない。これを、始めたのは、『解析入門Ⅰ(その8)』で、


*******************************

今、3人は、交換法則が、成り立たないものを、知るチャンスに、遭遇している。

*******************************
                 (『解析入門Ⅰ(その8)』より)


という言葉から始まった、可換でない群。つまり、非可換群というものを、知る旅を、していたからだ」

麻友「演算が、可換でないものは、作った。行列の積で、{AB \neq BA} となるものが、あった」

私「そう。これで、満足しても、良いのだが、『常に上を目指していく』麻友さんの場合、これでは、満足しないだろう」

若菜「えっ、どうして?」

私「あの、行列は、確かに、非可換だ。だが、行列全部からなる集合は、積に関して、群にならない」

麻友「ちょっと、どういうことよ。行列全部って、ゼロ行列が、あるから?」

私「問題は、もっと深刻だ。麻友さんも、逆行列というものを、知っているだろう」

麻友「あっ、そうか。

{\left(
\begin{array}{cc}
1 & 0\\
0 & 0
\end{array}
\right)
}

って、逆行列ないのか。確かに、

{\left(
\begin{array}{cc}
1 & 0\\
0 & 1
\end{array}
\right)
}

が、単位行列で、群の単位元みたいなものだけど、

{\left(
\begin{array}{cc}
1 & 0\\
0 & 0
\end{array}
\right)
}

にかけて、単位行列になる行列は、ないんだ。どうすれば、いいんだろう」

結弦「お父さん、この場合を、見落としていたの?」

私「私としては、可換でない演算が、あることを示し、一方で、群の定義を満たすものを、作って、実数の、掛け算と、足し算が、可換群になるということで済ますつもりだった。ところが、今日240円も、かけただろう。麻友さんが、もっと頑張れって言うんだよ」


麻友「太郎さん。例を、作れない?」

私「作れる」

結弦「即答!」

私「先日も挙げた、『代数学辞典 下』の「続 代数学小史」には、ハミルトンが、非可換体(ひかかんたい)または、斜体(しゃたい)である、4元数を、見つけたときのことが、書いてある。

*******************************

 4元数といい,イギリスのハミルトン(Hamilton,1805~1865)によって発見されたものである。
 彼は天才児で13才で既に数か国語に通じたといわれている.1824年ダブリン大学に入学し,1827年卒業に先だって天文台長に任命された.彼は詩も巧みでウアーズウアースとも交友があったという.
 1843年10月19日の夕方,妻とともにダブリンのローヤル・カナルを散歩していたとき,4元数の考えが頭にひらめいたので,即座にその橋の石の上に,{a+bi+cj+dk} に対する基本公式
{i^2=j^2=k^2=ijk=-1}
を刻みつけたといわれる.

*******************************
                 (『代数学辞典 下』p.994 より)

読んだ?」

麻友「こういうことを、いきなり思い付いちゃうのね」

私「読む人間の知識にもよるな」

若菜「どいうことですか?」

私「『代数学辞典 下』を、買ってもらったのは、1988年4月29日だ。巻末の歴史のところを読んだのは、もっと後だ。一方1988年に、広島へ行く私に、公文の馬場先生が、次の本を、渡してくれている。

安野光雅と言ってるが、数学を書いているのは、森毅だ。ハミルトンのところに、『1次元の数、実数。2次元の数、複素数。そして、3次元の数を、作れないかと、悩んだ。後年、時間を加えて、4次元の数、4元数を、作った』というように、書いてあるのを、読んであったのだ。相当悩んでいて、橋の上にいたとき、最後の閃きが、あったのだなと、分かる。天才とは、そういうものだと、麻友さんも、生きてきて良く分かっているのではないか?」

結弦「お父さん、今、飼っている問題は、ないの?」

私「『現代論理学』も、『数学基礎概説』も、1階の理論しか、扱っていない。2階の理論を、扱っている、

などに、冒険したいし、数学ばかりでなく、量子力学も、良く知りたい。飼っている問題は、沢山有るんだよ」

若菜「それで、今日は?」

私「4元数が、・・・」

麻友「ちょっと待って、4元数って、なんて読むの? 四元豚は、よんげんとんよね」

私「しげんすう、よげんすう、よんげんすう、と、人によって違うが、Wikipedia では、しげんすうになってる。ただ、理化学辞典では、よんげんすう、になってた。私達は、今後、しげんすう、としよう」

結弦「それで?」

私「{a+bi+cj+dk} は、{i,j,k} が、複素数虚数単位 {i} みたいに、使えるとする。それぞれ自乗すると、{-1} となる。{ij} は、どうなるのかと、心配だろうが、{ijk=-1} に、右から {k} を掛けて、{ijk^2=-k} で、{k^2=-1} だから、{ij(-1)=-k} で、実数は、複素数のときと同様、順番を入れ換えられるから、{ij=k} となる」

若菜「分かりました。それで、結合法則は、多分大丈夫なのでしょう。単位元は、{1} 。それで、逆元は?」

私「これ、簡単じゃないんだ。まず、4元数 {x=a+bi+cj+dk} の絶対値を、{|x|=\sqrt{a^2+b^2+c^2+d^2}} と、定義する。さらに、複素数のときと同様に、共役複素数に対し、共役4元数を、{\overline{x}=a-bi-cj-dk} と、定義する。そうすると、
{\displaystyle x \times \frac{\overline{x}}{|x|^2}=1}
となるんだ。複素数でも、{\displaystyle \frac{z \overline{z}}{|z|^2}=1} だったよね」

結弦「そうか、逆数があるから、割り算できるのか。{0} 以外では。そうすると、ハミルトンの四元数体を、{\mathbb{H}} と、あらわすと、{\mathbb{H}-\{0\}} は、群になる」

麻友「それが、積について、非可換群なのよね」

若菜「分かった。さっきの計算で、{ij=k} だけど、{ijk=-1} に、左から、{i} を掛けると、{i^2jk=-i} だから、{-jk=-i} 。ここで、左から {j} を掛けると、{-j^2 k=-ji} だから、{-(-1) k=-ji} 。これより、{k=-ji} よって、{-k=ji} 。つまり、{ji=-k} で、最初の{ij=k}と、違ってる。{ij=k=-ji} だから」

私「良く頑張った。非可換群というものもあることが、分かったな。それでは、もう23時41分なので、おやすみ」

若菜・結弦「おやすみなさーい」

麻友「おやすみ」

 現在2023年5月6日23時43分である。おしまい。