多様体と幾何学

松本『多様体の基礎』から始めて、松島『多様体入門』、志賀『多様体論』まで、制覇します。

解析入門Ⅰ(その18)

 現在2023年6月10日6時15分である。

麻友「昨日、若菜、冴えすぎ。付いて行かれなかった」

{a = a \circ e = a \circ (a’ \circ a’’)=(a \circ a’) \circ a’’=e \circ a’’}

{e \circ a =e \circ (e \circ a’’)=(e \circ e) \circ a’’ =e \circ a’’ =a}

私「と、導いた。普通の数学の専門書レヴェルに、なっちゃったな。若菜、説明して」


若菜「不利なときは戦線を拡大せよで、任意の、{a} に対して、右逆元があると、仮定しました。そのひとつを、{a’} と、しました。

{a \circ a’=e}

です。ここで、さらに、{a’} の右逆元も存在するので、そのひとつを、{a’’} とします。

{a’ \circ a’’=e}

単位元 {e} の性質で、{a=a \circ e }。上の式から、{a \circ e =a \circ (a’ \circ a’’)}

結合法則から、{a \circ (a’ \circ a’’)=(a \circ a’ ) \circ a’’}。右逆元の性質 {a \circ a’=e} より、{(a \circ a’ ) \circ a’’ =e \circ a’’}。これが、第1式でした。

{a = a \circ e = a \circ (a’ \circ a’’)=(a \circ a’) \circ a’’=e \circ a’’}

麻友「ふーん。分かった。私も、やってみる。第2式は、第1式から、{a=e \circ a’’} だから、 {e \circ a =e \circ a} の後ろの {a} に代入して、

{e \circ a =e \circ (e \circ a’’)}

と、できて、結合法則から、{e \circ (e \circ a’’) =(e \circ e) \circ a’’} で、{e} は、右単位元だから、

{(e \circ e) \circ a’’=e \circ a’’}

ここで、もう1回、第1式を使ったのよね。

{e \circ a’’ =a}

 これで、

{e \circ a =e \circ (e \circ a’’)=(e \circ e) \circ a’’ =e \circ a’’ =a}

が、任意の {a} で、成立する。だから、{e} は、左単位元でもある」


結弦「第1式の両端を使うというのは、思い付かなかった。お父さん、こんなの思い付けるの?」

私「自分では、分からなくて、この本、に救助を求めた」

麻友「太郎さんでも、そうか。それで、{e} は、左単位元でもあることが、分かったけど、単位元の一意性は?」

私「ここまで、分かると速い」

結弦「分かった。{d} も、右単位元だとすると、{e} は、左単位元でもあるから、

{e=e \circ d= d} でもあるから、{e=d}。よって、単位元は一意に定まる」


若菜「やっと、群というものが、少し分かってきました。演算の本当にエッセンスだけを、扱うものなのですね」

私「最後に、各 {a} に対し、逆元 {a’} が、一意的に定まることだが、・・・」

麻友「ちょっと、乱暴だけど、右逆元と、左逆元が、一致することを、証明したら? 私の計算で、{e \circ a’’ =a} というのが、あった。そして、{e} は、左単位元であることも、確かめてある。だから、{a’’=e \circ a’’ =a}。つまり、{a’’=a} となる」

若菜「右逆元と左逆元が、一致するためには {a} の右逆元を、{a’} として、{a \circ a’=e} とする。ところで、{a’ \circ a’’ =e} は、右逆元の定義から導かれる。そして、{a’’=a} だったことから、{a’ \circ a=e} が、分かる。これは、{a’} が、{a} の左逆元となることを、示している。つまり、右逆元と左逆元は、一致し、逆元は、一意的に、定まる。これにより、右逆元、左逆元という区別は、しなくて良い」

私「そこで、今後、{a} の逆元を、{a^{-1}} と書き、『エイインバース』と、読む」


結弦「それは、可換群の場合?」

私「私達は、演算が可換だとは、仮定していない。非可換群でも、右逆元と左逆元は、一致する」

結弦「そうなのか」

麻友「太郎さんは、6時15分から書いている。もう2時間45分。太郎さんには、当たり前なことも、私達には、初めてのことで、非常に疲れる。取り敢えず、これくらいで、投稿してよ」

私「そうだな。これで、群というものの定義が、出揃った。結合法則が成り立ち、単位元、逆元、が、存在するものが、群だ。そして、演算が、任意の元で、{a \circ b=b \circ a} を、満たすとき、可換群という。以前話したように、可換群を、アーベル群ともいう」

若菜「あの、アーベルですね。『婚約者クリスチーヌに看取られながら,26年の生涯を閉じる.』でしたね」

私「私は、まだ死なないぞ」

麻友「憎まれっ子世にはばかる」

私「あっ、酷いこと言って! 取り敢えず解散」

 現在2023年6月10日11時51分である。おしまい。